数字でみる「ワールドカップ2018 ロシア」- W杯はFIFAにとって金のなる木

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W杯ロシア大会のお金事情続編。

今回は、W杯にて莫大な賞金や準備金を負担するFIFAの収入源について。

W杯ロシア大会でのFIFAの収入は61億ドル(約6700億円)

ニューヨークタイムズ紙が見直したFIFAの財務書類によると、今回のワールドカップロシア大会で、FIFAが稼ぐ金額はなんと61億ドル(約6700億円)
前回2014年ブラジル大会から、13億ドル(約1430億円)増加した。

出典:FIFA Set to Make $6.1 Billion From World Cup / The New York Times

FIFAが負担する賞金や準備金なんて、総収入からみるとほんの一部だというこがわかる。

この巨額のお金は主に2つのルートから集まっている。
放映権料とスポンサー収入だ。

W杯の放映権料

W杯の放映権は各国がFIFAから購入する。
今大会でFIFAが稼ぐ放送権料の総額は約30億6,000万ドル(約3500億円)。

日本の場合、NHKと民法4局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジ)からなるジャパン・コンソーシアム(以下JC)が広告最大手の電通を通じFIFAから購入している。
今大会で、JCがFIFAに支払う額は600億円で、前回ブラジル大会の1.5倍だ。
なんと日本からの放送権料だけで、ロシア大会の賞金総額4億ドル(約450億円)を賄えてしまう。

日本で初めてW杯が放送されたのは1970年のメキシコ大会であり、放送権料は東京12チャンネル(現テレビ東京)の単独放送で8000万円だった。2018年ロシア大会までの48年間で750倍に上昇したことになる。

出典:W杯放送局は赤字確定? 放送権料48年で750倍 / 日刊スポーツ

W杯のスポンサー収入

今大会でFIFAが得たスポンサー収入は16億5000万ドル(約1815億円)。
前回ブラジル大会の16億2900万ドル(約1792億円)からはわずかに上昇した。
スポンサーには、下記の3つのカテゴリーがある。

FIFAパートナー

FIFA公式スポンサー最上位のカテゴリー。ワールドカップも含めFIFA主催の全ての試合(会場周辺含む)やイベントでの広告掲出や周辺ビジネス許可、FIFAロゴ(オフィシャルマーク)の8年間(2大会分)使用の権利が与えられる。枠は通常6つで(2018ロシアW杯だけの資格で1枠増やし7枠)、スポンサー料は年間20億円から50億円、総額1億2千ドル(約130億円)から1億8000万ドル(約200億円)規模である。契約できるのは1業種につき1社のみ。契約年数や契約料は企業によって異なる。

FIFAワールドカップスポンサー

FIFA公式スポンサーの2番目のカテゴリ。契約期間中に開催されるW杯と直接関連するスポンサーとしての権利を有し、FIFAロゴ(オフィシャルマーク)の4年間(1大会分)の使用権利が与えられる(但し、このカテゴリでも、複数大会分のスポンサー料を支払う契約を結べば、複数大会で権利持続)。枠は、8つで、スポンサー料は年間10億円から25億円、総額6800万ドル(約75億円)から1億ドル(約110億円)程度である。

リージョナルサポーター

2018年までは「ナショナルサポーター(National Supporters)」。どちらもFIFA公式スポンサー最下位のカテゴリ。2018年までの「ナショナルサポーター」は、開催国の企業に限り、自国での開催期間中の試合及びイベントにおいてのみ広告と周辺ビジネスを行えると規定されていた。今回2018年ロシアW杯で新設された「リージョナルサポーター」とは、欧州、北米、南米、中東とアフリカ、中東を除いたアジアの5つの地域に分けて、各地域に5社づつ、20枠を設けた。開催期間中のLED掲示板での広告掲出、チケットの優先的配分、所在地域におけるブランド広告権の権利を与えられる。スポンサー料は年間5億円から10億円で、公表されている総額は2000万ドル(約22億円)である。

メインのスポンサーとなるFIFAパートナーおよびFIFAワールドカップスポンサーの、前回ブラジル大会からの推移をみてみよう。
目立つのは赤枠で囲ってある中国企業の躍進だ。前回大会1社から、4社に増えている。

図にはないが、ロシア大会のアジア地区リージョナルサポーターは3社(帝牌、LUCI、雅迪)だが、こちらもすべて中国企業だ。
本大会出場32チームの中に中国はいないにも関わらず、スタジアムでは中国企業の広告がひときわ目を引いた。

不正の温床?FIFAの汚職疑惑

お金がありすぎるがゆえか、2015年頃その不正体質が明るみになり、逮捕者が出る事態に。

詳しくは下記リンクへ。

参考:2010年から現在までのFIFA汚職報道まとめ

参考:<イチから分かる>米FBIも捜査 FIFA汚職は何が問題になっているの?

先ほどのW杯スポンサーの顔ぶれの変化だが、汚職疑惑で離れていった企業の穴埋めを中国企業がしたという側面もある。

  • エミレーツ航空(2007年-2014年)総額1億9,500万ドル(約230億円)
  • ソニー(2007年-2014年)総額2億8000万ドル(約310億円)
  • カストロール(-2014年)
  • コンチネンタル (自動車部品製造業)(2006年-2014年)
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(-2014年)

世界的な5企業とのパートナーシップが切れることになったFIFAは、総額でおよそ10億ポンド(およそ1760億円)に及ぶスポンサーフィーを失ったと考えられている。

これらのスポンサーはビジネス面での判断によって契約が延長されなかったと発表されているものの、近年浮上しているワールドカップ招致をめぐる汚職疑惑が影響したとも伝えられている。

出典:FIFAの大型スポンサー3社が契約満了に

FIFAは実は非営利団体としてスイスで登記されている。
納税の義務がないのだ。
放映権料の高騰などどうみても「商業主義」に走っているように見える。


最後に、FIFAについて学べる動画を貼っておこう(13:13)

元ネタ:FIFA and the World Cup: Last Week Tonight with John Oliver (HBO)

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