数字でみる「食中毒」-統計・原因と対策

数字でみる食中毒

夏に気をつけたい食中毒。

食中毒に関する統計データを紐解いてみよう。

食中毒に関する統計

厚生省から毎年、年間の食中毒発生状況および食中毒事件一覧の資料が発表されている。
同省のサイトより閲覧可能。
本記事のデータはここから引用する。

参考:食中毒統計資料 |厚生労働省

それぞれの資料の中身は次の通り。

食中毒発生状況

年間(1月~12月)の全国の食中毒の発生状況が次5つの区別に基づいて、事件数・患者数・死者数が集計されている。

①都道府県別発生状況

②月別発生状況

③原因食品別発生状況

④原因物質別発生状況

⑤施設別発生状況

食中毒事件一覧

年間(1月~12月)の全国の食中毒事件の一覧がまとめられている。
項目は以下の通り。

  • 都道府県名等
  • 発生月日
  • 発生場所
  • 原因食品
  • 原因物質
  • 原因施設
  • 摂食者数
  • 患者数
  • 死者数

食中毒の概要(2017)

では、集計されているうち最新である昨年2017年のデータを紹介する。

概要

事件総数:1022件(うち国外および国内外不明事件8件)

患者数:16,705人

死者数:3人

月別

月別発生状況は下記の通り。

月平均85件、最多月は9月で114件、次いで10月、8月、2月。
夏場が相対的に多い。

一方、患者数を事件数で除した1事件あたりの患者数についてみると平均16.2人(総患者数/総事件数)だが、多い月から順に、1月が最多で33人、2月、12月と続く。

夏場に多いのは細菌性の食中毒。
高温多湿の環境で細菌の増殖が活発になる。

一方、冬場には、低温・乾燥した環境化で長く生存するウイルス性の食中毒が流行る。
特に食中毒の原因ウイルスとして代表的なノロウイルスによる食中毒は大規模化しやすく、冬場の患者数を押し上げる要因となる。

原因食品別

原因別にグラフにまとめた。

最多は魚介類、次いで肉類とその加工品、複合調理品と続く。
魚介類のみ内訳を紹介すると、貝類7件、ふぐ19件、その他170件。

※複合調理品:コロッケ、ギョウザ、シューマイ及び肉と野菜の煮付等食品そのものが2種以上の原料により、いずれをも主とせず混合調理又は加工されているもので、そのうちいずれが原因食品であるか判明しないもの。
※その他:(魚介類~複合調理品の)いずれにも該当しないすべての食品。酒精飲料、氷菓並びに藻類及びこれらの調理品又は加工品等。食品添加物、器具若しくは容器包装。

さらに、1事件あたりの患者数をみると、菓子類・複合調理品など大規模に流通するものは被害が大規模化しやすいといえる。

患者数500人以上の事例は次の2件。

出典:資料2 平成29年食中毒発生状況 | 厚生労働省

病因物質別

続いて、病因物質別。主要な原因は、細菌、ウィルス、寄生虫等。
それぞれどういうものがあるか例を示す。

◎細菌

  • サルモネラ属菌
  • ぶどう球菌
  • 腸炎ビブリオ
  • 腸管出血性大腸菌(O157など)
  • ウェルシュ菌
  • カンピロバクター

◎ウィルス

  • ノロウィルス
  • A型肝炎ウイルス
  • E型肝炎ウイルス

◎寄生虫

  • アニキサス
  • クドア
  • サルコシスティス

事件数および患者数別で原因をまとめた。

事件数でみると、細菌が最多で約4割、ウィルス・寄生虫がそれぞれ約2割となる。

一方で患者数でみると、約半数がウィスル原因となる。
なかでも、ノロウィルスがウィスル原因患者の99%を占める。
ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物には非常に多く(1g中に約10億個以上)のノロウイルスが含まれる。
さらにノロウイルスは感染力が非常に強く、少量のウイルス(10〜100個)でも感染・発症する。

さらに、患者数に対しての主要な病因物質を多い方から並べた。

2017年 食中毒 病因物質

発生施設別

最後は発生施設別。

飲食店約6割家庭約1割だが、報告されてないため統計上集計されていないだけで実際はもっと起こっていると思われる。

死者の出た食中毒事例(2017)

2017年の食中毒による死亡者数は3名(すべて別事例)。
詳細は次の通り。

出典:資料2 平成29年食中毒発生状況 | 厚生労働省

参考のため各新聞記事を引用する。O157の事例を除いては、知識があれば防げることがわかる。
イヌサフランの誤食については、毎年のように死亡事故が発生している。

食中毒の年次推移データ(事件数、患者数、死者数)

1981年(昭和56年)以降の年次データも集計されているので、グラフ化して紹介する。
近年特に減少傾向にあるとかいう嬉しいデータではない。

食中毒を防ぐには

最後に、対策情報を政府広報オンラインより紹介。

大切なのは3つ or 4つの原則6つのポイントを押さえることだそうだ。

食中毒予防の原則

細菌の場合【3原則】

:細菌を食べ物に「つけない

  • 手を洗う!(調理前/生肉・生魚・卵を扱う前後/調理中のトイレ・鼻かみ/オムツ交換・動物に触れる/食卓につく前など)
  • 調理器具を洗う!!(生肉・生魚を切ったまな板は使用の都度綺麗に洗う。できれば殺菌する。)
  • 食品・食器を分ける!!!(加熱する食材としない食材/それぞれを扱う食器(箸など)/密閉容器やラップを利用)

:食べ物に付着した細菌を「増やさない

  • 低温保存する!(マイナス10℃以下で増殖速度低下、マイナス15℃以下で増殖停止)

:食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける

  • 食材を加熱処理!(中心部を75℃で1分以上が目安)
  • 調理器具を殺菌!!(洗剤でよく洗ってから、熱湯をかけて殺菌/台所用殺菌剤)

ウイルスの場合【4原則】

ウイルスの場合は食品中では増えない。

:調理場内にウイルスを「持ち込まない

  • 健康状態の把握・管理!(ウイルスに感染しない、感染した場合調理場内に入らない、おう吐や下痢の症状がある場合調理厳禁)

:食べ物や調理器具にウイルスを「ひろげない

  • 手洗い、定期的な消毒・清掃!(ウイルスが調理場内に持ち込まれても、食品に付着させない)

:食べ物にウイルスを「つけない

(細菌の場合と同じ)

:付着してしまったウイルスを加熱して「やっつける

(細菌の場合と同じ)

食中毒を防ぐ6つのポイント

上記の3or4原則を実践ための6つのポイントにおける具体的方法

① 買い物

  • 消費期限を確認する
  • 肉や魚などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
  • 肉や魚などは汁が他の食品に付かないように分けてビニール袋に入れる
  • 寄り道をしないで、すぐに帰る

② 家庭での保存

  • 冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に保管する
  • 肉や魚はビニール袋や容器に入れ、他の食品に肉汁などがかからないようにする
  • 肉、魚、卵などを取り扱うときは、取り扱う前と後に必ず手指を洗う
  • 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に保つ
  • 冷蔵庫や冷凍庫に詰めすぎない(詰めすぎると冷気の循環が悪くなる)

③ 下準備

  • 調理の前に石けんで丁寧に手を洗う
  • 野菜などの食材を流水できれいに洗う(カット野菜もよく洗う)
  • 生肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べるものや調理の済んだものにかからないようにする
  • 生肉や魚、卵を触ったら手を洗う
  • 包丁やまな板は肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて使い分けると安全
  • 冷凍食品の解凍は冷蔵庫や電子レンジを利用し、自然解凍は避ける
  • 冷凍食品は使う分だけ解凍し、冷凍や解凍を繰り返さない
  • 使用後のふきんやタオルは熱湯で煮沸した後しっかり乾燥させる
  • 使用後の調理器具は洗った後、熱湯をかけて殺菌する(特に生肉や魚を切ったまな板や包丁)。台所用殺菌剤の使用も効果的。

④ 調理

  • 調理の前に手を洗う
  • 肉や魚は十分に加熱。中心部を75℃で1分間以上の加熱が目安。

⑤ 食事

  • 食べる前に石けんで手を洗う
  • 清潔な食器を使う
  • 作った料理は、長時間、室温に放置しない

⑥ 残った食品

  • 残った食品を扱う前にも手を洗う
  • 清潔な容器に保存する
  • 温め直すときも十分に加熱
  • 時間が経ちすぎたものは思い切って捨てる
  • ちょっとでもあやしいと思ったら食べずに捨てる

食中毒かなと思ったら

  • おう吐・下痢の症状は、原因物質を排除しようという体の防御反応であるため、医師の診断を受けずに、市販の下痢止めなどの薬をむやみに服用しない。
  • 早めに医師の診断を受ける。

以上。

僕は生牡蠣欲が無いので生牡蠣は食べないが、知れば知るほどノロウイルスは質が悪い。

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